人文地理学会大会 研究発表要旨
2009年 人文地理学会大会
セッションID: 206
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第2会場
資源ごみの集団回収にみられる全国的特徴
*波江 彰彦
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抄録

1. はじめに
 本報告では,近年における資源ごみの集団回収にみられる全国的特徴を提示することを目的とする。
 集団回収とは,町内会や子ども会などの住民団体が中心となって定期的に資源ごみを回収する,コミュニティ単位で行われるリサイクル活動である。回収した資源ごみは資源回収業者などに売却され,それと引き換えに団体の活動資金を得る。かつては住民団体と業者とのあいだで取り交わされる私的な活動であったが,再生資源の価格下落に伴う売却益の減少によって活動の継続が難しくなり,一方では廃棄物問題の深刻化によってリサイクルの重要性が増していく状況を受けて,行政が集団回収活動を支援するようになった。現在では,多くの自治体が集団回収活動団体や資源回収業者に奨励金を支給するなどの支援を行っている。
 後に示すように,近年リサイクルに対する行政の関与が強まっているものの,集団回収も一定の成果を上げ続けている。今後よりいっそう再生資源の回収を推進していく必要がある中で,行政によるリサイクルを補完し,また,これと協働するものとして,集団回収がもつ役割と可能性は小さくないと考える。本報告では,こうした役割や可能性について考察するための基礎的資料を得るべく,近年の集団回収の全国的傾向について整理したい。
2. 近年のリサイクル
 2001~2006年度における日本のリサイクル関連データの推移をみると、リサイクル率の伸びは自治体資源化率の上昇によるところが大きく,1人当たり集団回収量は微増である。その結果,自治体によって資源化された再生資源の割合は65.6%(2001年度)から70.1%(2006年度)に上昇し,リサイクルに対する行政の関与が強まっていることがわかる。
 自治体による収集の割合を再生資源別にみると,金属類・ガラス・ペットボトル・プラスチック・その他は90%以上の値を示しているのに対し,古紙は40%台で推移している。このことは,古紙の過半数が集団回収によって収集されていることを意味する。
3. 近年の集団回収
 次に,集団回収に関する分析に移りたい。データは,環境省が毎年調査・公表している「一般廃棄物処理実態調査結果」を利用した。このデータは,毎年自治体が回答するものである。したがって,このデータから得られる集団回収量は,自治体が把握しているもの,すなわち,集団回収活動支援制度を通じて住民団体等から報告を受けたデータであると考えられる。そのため,行政の支援を受けずに行われた集団回収活動によって収集された量は反映していない可能性が高いことに留意する必要がある。
 日本では,6割程度の自治体で集団回収量が記録されており,過半数の自治体で集団回収活動支援制度が行われていることがわかる。集団回収が行われている自治体とそうではない自治体とのあいだで,リサイクル率に大きな差はみられない。
 次に,1人当たり集団回収量の多少によって自治体を区分し,その違いをみてみる。自治体の5割以上は1人当たり集団回収量が45kg/人・年以下であり,リサイクル率は集団回収を実施していない自治体と同程度か,むしろ下回っている。この一因としては,集団回収が行われていない自治体で,多分別収集や資源化施設の稼働など行政によるリサイクルが推進されていることが考えられる。波江(2004)では,行政主導のリサイクルに重きを置く自治体と集団回収に重きを置く自治体を比較すると,前者でリサイクル率がより高い傾向があることを示した。1人当たり集団回収量が45kg/人・年以上の自治体では,高いリサイクル率が示されている。
4. おわりに
 集団回収の動向をより理解するためには,集団回収活動支援制度,行政の支援外で行われている集団回収などに関する分析・調査が課題である。
文献
波江彰彦(2004)「ごみの排出とリサイクルみられる地域間差異―福井県を事例に―」人文地理56(2),170-185頁。

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