人文地理学会大会 研究発表要旨
2010年 人文地理学会大会
セッションID: 104
会議情報

第1会場
1900年代ロシア、ドイツ作製中国地図と外邦図
アメリカ議会図書館所蔵地図の検討
*山近 久美子渡辺 理絵波江 彰彦鈴木 涼子小林 茂
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 発表者らは、2008年3月以降、アメリカ議会図書館において日本軍作製の外邦図を調査してきた。調査の過程で、ロシアやドイツが作製した中国の地形図も確認することができた。本発表では、ロシアやドイツ(プロイセン王国)による軍事測量地図と外邦図との比較を行う。
 日本の陸地測量部設立に影響を与えた、プロイセン王国軍による地図作製は、1700年以降実用的な地図が作製され始め、1875年の陸地測量部設置以降、地形図作製体制が整っていった。ロシアでは、1822年に軍事地形測量技師団が設立された。
 ロシアによる満州地域の測量は、日清戦争後の権益拡大とともに進んだ。ドイツも三国干渉後膠州湾を租借地とした。"Übersichtsblatt zur Karte von Ost-China 1:1000000" は1901年刊行で朝鮮半島や台湾も範囲に含まれる。"Marshrouten-karte der Prov.Mukuden.1904" はムクデン(現瀋陽)周辺の16,8000分1図で、調査行路沿いの集落、地形を記した初期外邦図の路上図と類似している。
これらの分析から、1901年に日本作製地図を参考にしてドイツの100万分1東中国図が作製され、先行して本格的地図を作製していたロシアの4露里図を参考にして1904年以降ムクデン地区の地図作製を行ったと位置付けられる。 本研究は、1919年(大正8)に臨時第二測図部長の口羽武三郎がロシアの満蒙調査、ドイツの山東省20万分1地図、さらにイギリス、アメリカの秘密測量について言及していた中国における列強の測量状況の解明に貢献できるものである。

著者関連情報
© 2010 人文地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top