抄録
グローバル化とローカル化とが交錯する多民族社会ロサンゼルスをフィールドに、日系エスニック景観とその担い手である日系ガーデナーに注目し、エスニシティの変容と意味を再考したい。19世紀末以来、北米西海岸に定住した日本人が多くの困難や差別を克服して生活基盤を固める上でガーデナーは重要な職業であった。とりわけ一年中温暖なロサンゼルスにおいて、急速な人口増加と都市化の進展がガーデナーの需要を高めた。1938年に南カリフォルニアに分散する日系ガーデナーをまとめ、組織された南加庭園業組合連盟は現在も20組合、約1200名が加盟する国内最大の日系職業集団である。かれらは顧客の庭を管理する本来の仕事に加え、日系エスニック景観の創出・維持や日本文化の普及・継承、さらには日系とホスト社会とをつなぐ役割を果たしてきた。多様性の中での共存やグローカル化の進展に伴うエスニシティの行方を考察する上で日系ガーデナーは興味深い存在である。