比較生理生化学
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総説
線虫の化学感覚と行動
松浦 哲也
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2006 年 23 巻 1 号 p. 10-19

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抄録

線虫はわずか302個のニューロンから構成されており, それらすべての接続が明らかになっている。そのため, 感覚の受容とその処理過程が比較的容易に理解できる。また, 全ゲノムの塩基配列が明らかとなっているため, 遺伝子レベルの解析も可能である。線虫は行動とその神経基盤, 分子機構を結び付けることのできる数少ない生物の1つであるといえる。本稿では, 線虫の化学感覚と化学走性行動に関する神経基盤および分子機構について紹介する。線虫は周囲に存在する特定の化学物質に対して化学走性行動を発現する。この行動の発現には, 線虫頭部や尾部に存在するアンフィド感覚器やファスミド感覚器での化学情報の受容が重要であることが分かっている。最近では, 化学物質とエサの有無を関連付けた連合学習など線虫行動の可塑性や, 化学走性時の個体間の相互作用について新たな知見が得られつつある。

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© 2006 日本比較生理生化学会
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