比較生理生化学
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総説
覚醒下モデルマウスからニューロン活動を記録し,大脳基底核疾患の病態を解明する
知見 聡美
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2009 年 26 巻 4 号 p. 169-174

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抄録

  マウスにはミュータントやトランスジェニックが多数存在し,これらの動物を行動学的,電気生理学的に解析することは非常に有用であるが,マウスにおける電気生理学的解析はin vitro におけるスライス実験がほとんどであり,個体そのものからニューロン活動を記録した例は非常に少ない。大脳基底核疾患の1つであるジストニアは,筋収縮が不随意に起こることによって,姿勢の異常や不随意運動が生じる難病であるが,解析を行うために適したモデル動物が存在しなかったこともあり,その病態についてはほとんど明らかにされていなかった。近年,ヒト全身性ジストニアの原因遺伝子を組み込むことによって,ジストニアのモデルマウスが作製された。私達は,マウスのニューロン活動を覚醒条件下で記録するシステムを確立し,このモデルマウスの神経活動を解析した。このマウスでは,大脳基底核の出力部である淡蒼球内節において,ニューロンの活動低下と大脳皮質刺激に対する長い活動抑制を伴う異常な応答パターンが観察され,これらがジストニア症状の発現に関与していることが示唆された。さらに実験を進めることにより,ジストニアの正確な病態を明らかにし,効果的な治療法の開発にも貢献できると期待される。

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© 2009 日本比較生理生化学会
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