比較生理生化学
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技術ノート
自由歩行する昆虫から行動と神経活動を同時計測するための新たな実験システム
甲斐 加樹来岡田 二郎
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2012 年 29 巻 1 号 p. 18-25

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抄録

 我々は,一般的な埋め込みワイヤ電極を用いた電気生理学的手法に,ファクトリ・オートメーション機器として用いられる画像センサを導入して,非拘束昆虫から神経活動の細胞外記録と行動計測を同時に行うための実験システムを開発した。このシステムでは,画像センサによるリアルタイム画像解析の結果をアクチュエータにフィードバックして,カメラが動物を追跡する。これにより,比較的広範囲にわたり動物の細かい挙動を高倍率で撮影することが可能となる。また,動物のターンにともなって自動回転するスリップリングを装備することにより,電極線の捩れを解消し,長時間の神経活動記録が可能となる。このシステムは,画像解析によって算出される,動物の運動を表すユーザー定義のパラメータをアナログ出力して,神経活動と共に記録するためのDAコンバータを備えている。このシステムを用いて,非拘束のフタホシコオロギの歩行運動と前大脳におけるニューロン活動を記録した。本システムは,適切な実験系の設定と画像センサの機能を応用することで,昆虫のような小動物を対象に,歩行をともなう行動と神経活動の関連を解析することが期待できる。

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© 2012 日本比較生理生化学会
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