比較生理生化学
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総説
網膜神経回路におけるH+ 負帰還信号の分子機構としてのV-ATPase
山田 雅弘
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2013 年 30 巻 4 号 p. 183-193

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抄録
神経終末のシナプス前膜にある電位感受性L型Ca2+チャネルは,生理的pH条件で細胞外液のわずかなpH変化に感受性が高いことが知られている。網膜水平細胞から放出されるプロトン(H+)が,視細胞終末に存在するCa2+チャネルを抑制することによって,視細胞からのグルタミン酸放出を抑制するという抑制性伝達物質として作用しており,その結果,網膜における中心周辺拮抗受容野に基づく空間的コントラスト機能の改善に寄与していると考えられる。このH+負帰還機構に関し,H+ポンプとして働くH+の放出/取込を行う分子モーターである細胞膜に存在するV-ATPaseについて詳しく検討する。細胞外表面近傍のH+濃度は, ATP加水分解エネルギー,または膜電位とH+の逆転電位との差に基づくH+駆動力によるH+ポンプによって制御されている。神経系におけるシナプス間隙の速いpH制御に関して,ATP加水分解によらないH+駆動力が寄与している可能性について考える。さらにV-ATPaseへの小分子(一酸化窒素や硫化窒素)による制御を通じた網膜神経回路網制御の可能性についても述べる。
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© 2013 日本比較生理生化学会
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