弘前医学
Online ISSN : 2434-4656
Print ISSN : 0439-1721
原著
冠動脈疾患における血中アペリン濃度の減少
横山 公章齋藤 新樋熊 拓未花田 裕之長内 智宏 大徳 和之福田 幾夫奥村 謙
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2010 年 61 巻 1 号 p. 58-64

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抄録
 脂肪細胞は様々な生理活性をもつアディポカインを分泌するが,アペリンはその一つである.血中アペリン濃度は心不全患者で低下することが報告され,心血管疾患で重要な役割を演じている可能性がある.しかし,冠動脈疾患 (CAD) や弁膜疾患 (VHD) などの心疾患における血中アペリン濃度は解明されていない.我々は待機的手術を行った CAD患者31例と VHD患者14例を対象に検討した.心疾患のない健常例20例においても検討した.術前に採血を行い,術中に内臓・皮下脂肪を採取した.血中アペリン濃度は健常例に比して CAD と VHD では低下していた.アペリン濃度を CAD と VHD 間で比較すると,CAD で有意に低下しており,HMG-CoA還元酵素阻害薬 (スタチン) の影響を受けなかった.左室収縮能 (LVEF) は CAD で低下していた.血中アペリン濃度と LVEF の相関関係は認めなかった.内臓脂肪のアペリンmRNA発現は皮下脂肪より増加していたが,2群間に差を認めなかった.以上より,血中アペリン濃度はCAD で低下するが,その病態生理学的意義については今後の検討を要する.
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© 2010 弘前医学編集委員会
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