弘前医学
Online ISSN : 2434-4656
Print ISSN : 0439-1721
弘前医学会抄録
〈一般演題抄録〉人工ヒト腹膜組織を用いた Carbonyl reductase 1 による卵巣癌腹膜播種抑制効果の形態学的解析
追切 裕江浅野 義哉下田 浩横山 良仁
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 69 巻 1-4 号 p. 202-

詳細
抄録

【目的】人工ヒト腹膜組織を用いて上皮性卵巣癌腹膜播種モデル を作製し、Carbonyl reductase 1 (CR1) DNA-デンドリマー複合体導入による癌腹膜播種初期動態の変化から、CR1 による遺伝子治療効果の機序を明らかにする。 【方法】1) 人工ヒト腹膜組織に漿液性卵巣癌細胞(HRA)を播種し、播種動態を形態学的に解析した。2) その播種過程をマウスin vivo モデルと比較し、本卵巣癌播種モデルの妥当性を検証した。3) 本モデルに CR1DNA を導入し、癌細胞播種の抑制効果を経時的に解析した。 【結果】1) 癌細胞は穿孔を形成しながら中皮層に侵入し、中皮間および中皮下で増殖して集塊を形成した。24 時間後にはリンパ管ヘの侵襲がみられ、48 から 72 時間後には癌細胞が集塊を形成しながら組織深部に浸潤していた。2) マウス in vivo モデルにおける癌細胞浸潤では人工ヒト腹膜での所見と形態的類似性が認められ、本 in vitro モデルにおける卵巣癌腹膜播種動態の再現性を確認した。3) このモデルに対して CR1DNA を導入すると、人工ヒト腹膜組織上の癌細胞増殖が有意に抑制され、ネクローシスの誘導を示す結果を得た。し かし中皮下ヘの浸潤は抑制されていなかった。 【結論】人工ヒト腹膜を用いた新たな in vitro 腹膜播種モデルにより、CR1 導入による増殖抑制とネクローシス誘導を通した卵巣癌腹膜播種抑制効果が示唆された。

著者関連情報
© 2019 弘前医学編集委員会
前の記事 次の記事
feedback
Top