弘前医学
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弘前医学会抄録
〈一般演題抄録〉 低酸素は、卵巣の純粋型間質性腫瘍における F-l8 FDG 偽陽性に関与する
清野 浩子呉 雲燕吉澤 忠司羽賀 敏博後藤 慎太郎諸橋 聡子鬼島 宏
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2019 年 69 巻 1-4 号 p. 202-

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抄録

[背景·目的] Thecoma や Fibroma などの卵巣純粋型間質性腫瘍は、時にFDG-PET で偽陽性を示し卵巣癌との鑑別が困難である。当院で 2008 年から20l3 年の間に術前 PET/CT が施行され、その後外科手術により病理組織診断が確定した卵巣病変が78 例あるが、この 78 例中 6 例に偽陽性が認められた。偽陽性 6 例の内訳は、2 例がFibroma (SUVmax 4.0とSUVmax 4.l)、l 例がCellular fibroma (SUVmax 5.2)、l 例が Fibrothecoma (SUVmax 2.7)であり、残り 2 例が炎症性疾患であった。今回我々は、偽陽性を認めた卵巣純粋型間質性腫瘍 4 例について、FDG-PET 陰性の Fibroma 2 例や SUVmax 5.5 未満の非浸潤性卵巣癌 8 例と対比し、偽陽性の原因を病理学的に検討した。 [方法] 卵巣純粋型間質性腫瘍 6 例と、SUVmax 5.5 未満の非浸潤性卵巣癌 8 例について、MRI、FDG-PET、HE 染色、免疫染色(GLUT-l, LATl, Ki-67 labeling index, HIFla, VEGF)を評価した。また、卵巣純粋型間質性腫瘍 6 例については、RT-PCR で HIFlaの発現を解析した。 [結果] 卵巣純粋型間質性腫瘍のうち偽陽性 4 例は何れも、陰性 2 例に比べてSUVmax が高く、HE 上で腫瘍細胞成分が豊富であった。MRI では、FDG 偽陽性集積部位に一致した、T2 強調像での信号上昇と造影九進が見られ、これらの所見は嚢胞変性の高度な部位の周囲で§立った。免疫染色では、偽陽性 4 例は何れも LATl が陰性で、細胞増殖率(Ki-67 labeling index)も低く、悪性化の可能性は低いと判断された。一方、GLUTl, HIFla,VEGF の発現は必ずしも低いとは言えなかった。卵巣純粋型間質性腫瘍 6 例の RT-PCR では、FDG 偽陽性 4 例全てで HIFlaの発現が認めれ、陰性例 2 例には有意な発現は認められなかった。 [結論] 卵巣純粋型間質性腫瘍は元々Hypo vascular tumor として知られているが、腫瘍細胞成分の増加に伴う腫瘍内虚血により、低酸素誘導因子 HIFlaの増加、糖代謝の上昇(GLUTl 増加)、血管新生の増加(VEGF 増加)がもたらされ、FDG-PET/CT や MRI の画像所見に反映されている可能性がある。

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