植生史研究
Online ISSN : 2435-9238
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兵庫県板井・寺ケ谷遺跡における姶良Tn火山灰直下約24000 年前の花粉化石の空間分布に基づく植生の復原
大井 信夫
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1993 年 1 巻 2 号 p. 49-57

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抄録

一遺跡内における花粉化石の空間的分布を解析し植物の分布,配置の復原を試みた。試料は兵庫県板井・寺ヶ谷遺跡の姶良Tn火山灰直下の泥炭を29地点で採取した。26の主要な花粉型の各地点の産出頻度の分布図を示し,その最大・最小・平均・変動係数(標準偏差/平均)を求めた。花粉型は産出頻度と変動係数に基づき,木本のA-I,A-II,A-III,草本のH-I,H-IIの5つのグループに分けられる。A-I,A-II,H-Iは変動係数が高く,局地的な要素と考えられ,A-III,H-IIは変動係数が低く,広域的な要素と考えられる。局地的な花粉型(A-I,A-II,H-I)の分布様式にもとづいて,遺跡内局所における親植物の分布を復原した。遺跡はトウヒ属・ヤナギ属・カパノキ属・トネリコ属・ハンノキ属の木本とミズバショウ属・キンポウゲ属・リンドウ属などの草本が生育する開けた林だった。

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© 1993 日本植生史学会
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