室戸半島大野台(134°00´E, 33°26´N, 海抜高度40–50m)の海成段丘面下堆積物に含まれる花粉および大型植物化石群から,暖温帯に分布するマツ属,モミ,ツガ,トガサワラなどの針葉樹とクマシデ属,ケヤキ,ブナ属,ナラ類などの落葉広葉樹からなる森林が復元された。この堆積物は,イオウを含有することと,ハマゴウなどの海浜植物の化石が産出することから海成とみなされ,段丘面高度分布と古地磁気層序対比から大阪層群のMa5海成粘土層の可能性が考えられた。同地域の完新世堆積物中の花粉群から復元される植生は常緑広葉樹林であったが,この堆積物が堆積した時代には,同じ間氷期でもシイ属,カシ類などの分布拡大がみられなかった。これは,常緑広葉樹林の成立を制限する冬の寒さなどの条件が間氷期によって異なっていたためと考えられる。