植生史研究
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Print ISSN : 0915-003X
クリのSSRマーカー
山本 俊哉
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ジャーナル オープンアクセス

2004 年 12 巻 1 号 p. 47-52

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抄録
SSRマーカー(別名マイクロサテライト)は,共優性で情報量が多いことから,集団の多様性解析,個体の識別,遺伝子流動,遺伝子地図作成において,現在最も有効なDNAマーカーである。その特徴は,共優性の遺伝様式を示すこと,多型性が高く近縁の個体間でも差異が得やすいこと,反復数が変異に富んでおり対立遺伝子数が多いこと,ゲノム中に豊富に存在すること,微量のサンプルで分析が可能であること,DNAシークエンサーなど自動分析に適していることが挙げられる。クリ品種「筑波」のゲノミックDNAを用いて,(AG) / (CT)の反復配列をターゲットとして,マグネットビーズによる濃縮法によりSSRマーカーを作成した。開発した15種類のSSRは,1~16の対立遺伝子を持ち,ヘテロ接合度の観察値HOが平均で0.47,ヘテロ接合度の期待値HEが平均で0.50,識別能力(power of discrimination)が平均で0.62と多型性が高く,クリの個体識別に有効であった。多型を示した14種類のSSR座について,クリ30品種・系統を分析した結果,すべての品種・系統が識別可能であった。4つのクリのタイプ(日本由来栽培,韓国由来栽培,日本由来自生,韓国由来自生)で対立遺伝子の種類やその頻度分布を見たところ,明確な遺伝的多様性の差異はなかった。また,クリで開発したSSRマーカーは,他種にも適用可能であり,多型頻度も高かった。
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© 2004 日本植生史学会

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