抄録
森林火災などの火事の歴史を明らかにする目的で,堆積物中の微粒炭の研究が進められている。本研究では,滋賀県曽根沼堆積物中の小微粒炭(microscopic charcoal particles)と大微粒炭(macroscopic charcoal particles)の含有量分析を行い,17,000年前以降の火事の歴史を解明した。分析の結果,小微粒炭と大微粒炭の含有量変化の傾向は異なっていた。小微粒炭は,深度7.6~6.8 m(13,000~10,000年前に相当)で連続して多産した。大微粒炭は,深度7.0 mより上位(約10,000年前以降)で,しばしば突発的に多くなる傾向が認められた。以上のことから,13,000年前から10,000年前には,広い範囲で頻繁に火事が起こったのに対し,近隣の火事は,10,000年前以降に少なくとも数度,起こったものと考えられた。これまでの微粒炭研究からも,更新世末期から完新世初頭に火事が頻繁に起こったことが指摘されており,同時期に少なくとも近畿地方において火事が広域に起こっていたと考えられる。さらに,微粒炭の反射率測定を行った。その結果,深度300 cm(約4000年前)の微粒炭は,比較的高温(約500°C)で生成されたと考えられ,これらは樹木の燃焼によって生成したものと推測された。