植生史研究
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北海道産白亜紀の双子葉類木材化石 および材形質の初期進化
高橋 賢一鈴木 三男
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2005 年 13 巻 2 号 p. 55-77

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抄録

北海道に分布する蝦夷層群の下部白亜系Albianから上部白亜系Santonianの層準から144点の双子葉類の木材化石が採集され,材形質を検討した結果,10属14種が認められた。14種すべてが新種であり,10属のうちCastanoradix, Frutecoxylon, Nishidaxylon, Sabiaceoxylonの4属が新属であった。残り6属のうちIcacinoxylon, Magnoliaceoxylon, Paraphyllanthoxylon, Plataninium, Ulminiumの5属は,これまでに白亜系および第三系からの産出が既に知られていたもので,一方,Hamamelidoxylonは過去に第三系からのみ産出していたものであった。各地質年代ごとの産出は,Albianから1種,Cenomanianから4属4種,Turonianから8属10種,Coniacianから6属7種,Santonianから7属8種であった。最も古い層準であるAlbianから産出した唯一の種Icacinoxylon kokubuniiの2標本は,双子葉類の木材化石では日本最古のものである。世界的に見ても,蝦夷層群に対比される年代の双子葉類の木材化石を用いた系統立った研究は過去に行われていなかったため,本研究により,白亜紀中期における材構造の多様性が初めて明らかとなり,初期の材進化についての検証がなされた。

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© 2005 日本植生史学会
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