植生史研究
Online ISSN : 2435-9238
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植物珪酸体群集変動からみた 北海道における最終間氷期以降のササの地史的動態
ササを指標とした積雪・温量環境の推定
佐瀬 隆細野 衛三浦 英樹
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2011 年 20 巻 2 号 p. 57-70

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抄録
北海道北部3 地域(羽幌,サロベツ,頓別)の累積土壌層に含まれる植物珪酸体記録の分析からササの動態を解明し,ササを指標として最終間氷期以降における温量と積雪環境の推定を試みた。羽幌ではササが最終間氷期以降継続して存在したが,サロベツ,頓別では最終氷期においてササが希薄であった。従来の北海道の植物珪酸体記録を合わせると,北海道北部,東部地域では,羽幌などの限られた地域を除き,最終氷期を通じてササが希薄であったことが一般的であると推定される。現在のササの地理的分布から考えると,ササの生育には,厳冬期における50 cm以上の積雪環境と温量指数(WI)17° C・月以上の温量環境が必要である。他の古植生記録にもとづけば,最終氷期における北海道北部,東部地域は,WI:17° C・月以上の温量環境を満たしていたと考えられることから,これらのほとんどの地域では,積雪が50 cm 以下のためにササが希薄になったと考えられた。最終氷期における北海道北部,東部のササの希薄な分布とササの移動速度の遅さから考えると,現在の北海道全域におけるササの稠密な分布を説明するためには,最終氷期中に,羽幌のようなササの避難地となりうる場所が北海道北部,東部地域に散発的に存在し,完新世になって,そのような場所から再び北海道全域にササが拡散したと考えられる。
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© 2011 日本植生史学会

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