1995 年 3 巻 2 号 p. 55-60
生きた化石といわれる古い植物が日本に生き残っているのは,南北地形で乾燥地が無かったからであろう。日本の高山は雪線に達している山がなく,ハイマツPinus pumilaの例でもわかるように,北の亜寒帯のフロラが氷河と共に南下し,森林限界線以上の山稜に残存したものと考えられる。針葉樹林帯から下が日華区系に属し,植生帯は温度勾配にしたがって,南に高く,北に低く配置されている。森林限界以上に分布する植物の多くは,北方の海岸にも同種が見られるのと対照的に,暖温帯照葉樹林のメンバーは台湾から中国大陸南部で分布が終わる種が多く,そのほとんどは東南アジア域の山地に多くの種をかかえている属の分布北限に分化した種で占められている。