植生史研究
Online ISSN : 2435-9238
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近江盆地南東部の布施溜における 最終氷期・後氷期の花粉化石群
松下 まり子前田 保夫
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1996 年 4 巻 1 号 p. 35-40

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抄録

近江盆地南東部の八日市市布施町布施溜(ふせだめ)において,現在の溜池の堆積物とそれに続く一連の池沼堆積物とともに,最終氷期後半を示標する広域テフラ姶良Tn火山灰(AT)を挟在する一連の堆積物を得た。この堆積物中の花粉化石群を検討し,最終氷期と後氷期の植生史を議論した。最終氷期のAT降灰期前後にはハンノキやヤチヤナギが繁茂する泥炭地あるいは沼沢地が広がり,周辺にはマツ属単維管束亜属,トウヒ属,モミ属,ツガ属といった針葉樹とコナラ亜属,カバノキ属などの落葉広葉樹が混在する森林が成立していた。後氷期の古代から中世にかけては,沼沢地に溜池が築造され,フサモ属,ジュンサイ属,ガガプタなどが繁茂していた。溜池周辺では常緑広葉樹林からマツ二次林へ変遷する過程がみられた。

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© 1996 日本植生史学会
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