植生史研究
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秋田県大館市池内における十和田八戸 テフラに埋積した森林植生と年輪年代学の適用
寺田 和雄辻 誠一郎
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1999 年 6 巻 2 号 p. 39-47

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抄録
県大館市池内(いけない)の十和田八戸テフラ下の埋没林(約13,000年前)において,その森林植生の復元と年輪年代学的研究を行った。この埋没林は十和田火山東方に位置しているため,十和田八戸テフラの下部の降下テフラ(To-HP)は堆積せず,上部の火砕流堆積物(To-H)のみにおおわれていた。埋没林の木材化石の樹種同定の結果,トウヒ属が90%,モミ属10%であったことから,トウヒ属の優占する植生であったと考えられた。トウヒ属5個体の円盤を採集し,その年輪幅を測定し,クロスデイティングを行った。その結果,それらはクロスデイティングが成立し,3個体の最終形成年輪の形成年が一致した。さらに,以前の研究で十和田火山東方の同じ八戸テフラ下の埋没林で作製したトウヒ属の標準年輪指数と照合したところ,クロスデイティングが可能となり,十和田火山東方の埋没林と同じ年に死滅したことが明らかになった。また,最終形成年輪の年輪構造の観察から,その年の晩材形成がすでに終了しており,この埋没林は,ある年の秋から次の春までの間に死滅したことがわかった。この結果は十和田火山東方の埋没林の結果と一致し,同時に起きた十和田火山の噴火により,短時間のあいだに埋積され,死滅したことが明らかになった。
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© 1999 日本植生史学会

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