HISPANICA / HISPÁNICA
Online ISSN : 1884-0574
Print ISSN : 0910-7789
ISSN-L : 0910-7789
論文
従属節における前時性・後時性を表す時制について
メキシコでのアンケート調査から
鈴木 恵美子
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 2024 巻 68 号 p. 79-98

詳細
抄録

 本稿は、メキシコで実施した従属節(名詞節)の時制選択に関するアンケート調査の結果を分析することを目的とする。今回対象とするのは、従属節の動詞が接続法になる2 つのケースである。1 つは、主動詞が直説法現在で、従動詞が前時(「発話時に近接した過去」)の事象を表す場合(例: “No creo que {fuera~ haya sido} Juan”)、もう1 つは間接話法で、主動詞が「発話時に近接した過去」の発言を表し、従動詞がそれより後時の事象を表す場合(例: “Me dijo que {vaya~ fuera} a buscarla”)である。同時にアンケートでは、1 つ目のケースについては単文において発話時に対する前時性を表す時制形式、2 つ目のケースについては従属節が直説法で主動詞に対する後時性を表す時制形式を問う質問もおこなった。そして同じ被験者の中で、直説法と接続法の場合で前時性・後時性がどのような時制形式によって表されるか、その傾向を観察し分析した。結果として、直説法か接続法かによって従動詞の前時性・後時性を表す時制形式の選択傾向に違いが生じることが明らかになった。このことから、結論として従属節におけるV 2 の前時性・後時性を表す時制選択には、直説法か接続法かによって異なる要因が働くことを主張する。

著者関連情報
© 2024, Asociación Japonesa de Hispanistas
前の記事 次の記事
feedback
Top