2009 年 20 巻 p. 67-71
2006 年4 月4 日から5 月6 日に,広島県呉市の鎌ヶ原川において,ゲンジボタルの上陸幼虫543 頭を捕獲した.上陸幼虫の重量は雌雄とも上陸時期が遅い個体ほど軽いという傾向がみられた.上陸幼虫を,17,20,23℃に設定した恒温器内で全暗状態にて個別に飼育した結果,446 頭が羽化した.この3 種の飼育温度では,温度が高いほど蛹期の長さが短いという傾向がみられた.同じ温度で飼育した場合,上陸時期が遅い幼虫ほど蛹期の長さが短かった.また,同じ飼育温度下における上陸幼虫の重量と蛹期の長さの間には正の相関が認められた.さらに,蛹期の長さ / 幼虫重量は,上陸時期が異なっていてもほぼ一定であった.これらのことから,ゲンジボタルの蛹期の長さは,上陸幼虫の重量と蛹期間中の温度によって決まり,適度な温度の範囲では,蛹期間中の温度が高く上陸幼虫の重量が軽いほど蛹期の長さは短くなると考えられた.