人と自然
Online ISSN : 2185-4513
Print ISSN : 0918-1725
ISSN-L : 0918-1725
兵庫県北部における伝統的な植物利用 —編組製品に着目して—
ジャーナル フリー

2016 年 27 巻 p. 129-148

詳細
抄録

兵庫県北部には,今でもハイイヌガヤ・マタタビ・スゲなどで作った自家製編組製品が残っている.それらには身近な植物を利用してきた先人たちの知恵が凝縮されているが,その素材植物を採集できる人や,植物利用の方法を記憶している人の高齢化が進んでいる.そこで,兵庫県北部の香美町を中心とした地域でアンケート調査を行うとともに,詳しい聞き取りや現認調査により現在も残っている編組製品を調べた.さらに素材の採集・加工方法についても調べ,この地域で昔から行われてきた,あるいは現在も行われている植物利用について記録した.調査からは自家製編組製品の現状や,材料に選ばれる植物の道具に適した特性,たとえば,ハイイヌガヤの枝は曲げやすい,マタタビはタケの材料より柔らかく使い心地がよい,スゲの葉は水はけがよく軽いなどが明らかとなり,この地域における植物利用の特徴や,植物の採集・加工方法における知恵の伝承について考察した.

© 2016 兵庫県立人と自然の博物館
前の記事 次の記事
feedback
Top