抄録
日本の図鑑では,ヤナギ属の葉形には 5 つの基本用語(線形,披針形,長楕円形,楕円形,卵形)が使われてきたが, 改訂新版『日本の野生植物』のヤナギ科(大橋,2016b)では披針形に代わって,「狭卵形」が用いられた.この経緯を知 るために,用語の原語(英語,ラテン語)での葉形の範囲と対応する日本語の用語をまとめた.さらに江戸末期以降の日 本の出版物で,葉形の用語の範囲を記述と図から集めて,歴史的な経緯も含めて整理した.その結果,「狭卵形」は, SADT (1962a,b)による相称平面図形の用語での anguste ovatus に端を発し,清水(2001)が「狭卵形(披針形)」とした ものが大橋(2016b)に継承されたと理解した.現在でも披針形はよく使われる用語であり,今後も狭卵形の同義語として 用いるのが好ましいと考えている.また長楕円形と楕円形についても混乱があり,区別点である葉縁の形状が日本では 徹底されていないこともわかった.最後にヤナギ属の葉形と用語の模式図をまとめて提案した.