北海道畜産草地学会報
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原著
北海道のペレニアルライグラスにおける冬枯れ危険度の地域差検討の 試み
藤井 弘毅
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2023 年 11 巻 1 号 p. 13-25

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抄録

要約 北海道東部太平洋側の少雪寒冷地帯に位置する十勝地方の生産者圃場で導入されたペレニアルライグラス(Lolium perenne L.)において、冬枯れの発生実態を調査した。その結果、冬枯れは頻発するものの、その程度および要因には地域間および年次間で差異が認められた。また、牧草の越冬に関する既往の文献を参照し、調査で認められた冬枯れの程度および要因と気象要素との関係から、冬枯れの多発条件を暫定的に設定した。それにより、道内の主なアメダス観測所105地点の過去20カ年(2001~2020年)の各々について、冬枯れ多発年に該当したか否かの判別を試みた。 冬枯れ多発年の出現頻度が20カ年中6カ年以上と高かった地点は、道東、すなわち太平洋側東部とオホーツク海側で30地点と多かったが、道東以外でも日本海側の太平洋側西部との境界付近や太平洋側西部で6地点が該当した。一方、道東でも冬枯れ多発年の出現頻度が低かった地点も認められた。したがって、冬枯れの危険度をより細かく評価することの重要性が示唆された。なお、各地点は、冬枯れの危険度と冬期の気候との関係によって、少雪かつ厳寒なために正常な越冬が難しい地点(Ⅰ)、積雪は少ないが温暖なため越冬することができる地点(Ⅱ)、厳寒か温暖かに関わりなく、初冬から、または寒くなるのと同時に着実に積雪が進むため、あるいはそれに加えて多雪であるために越冬することができる地点(Ⅲ)の3つのグループに大別することができると推察された。

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© 2023 北海道畜産草地学会
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