抄録
早田輝洋は,舌根調和を日琉祖語の特定のドメインに再建する仮説を提唱した。
木田章義とジョン・ホイットマンは早田の仮説の射程を拡大したが,有坂・池上法
則における *u, *o₁, *o₂ の振舞を説明しなかった。本論文では,この問題を解決す
るために,有坂の第一則と第二則を音法則の連鎖として再解釈する。文献学的証拠
と内的再建によれば,有坂の第二則の最も厳格な部分は福田の法則 (*o₂ > o₁ /u$_)
によって再解釈可能である。しかし,有坂の第一則を音変化として解釈することは
難しい可能性がある。以上は,日琉祖語の母音体系の改訂の必要を暗示するもので
ある。