保健師教育
Online ISSN : 2433-6890
委員会活動報告
教育課程委員会活動報告
教育課程委員会
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2019 年 3 巻 1 号 p. 45-46

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I. はじめに

社会的格差が進行する中,保健師に対して多様で複雑な健康問題への解決が求められている.本委員会では,そうした社会的期待に応える保健師の専門技術の明確化を目指し,2017年度より「親子保健活動における公衆衛生看護技術の体系化」に取り組んでいる.2018年度は,2017年度に検討した「親子保健活動における公衆衛生看護技術項目」について,夏季研修での意見交換,会員校および関係団体へのウエブによるパブリックコメントの募集を行い,項目の精緻化を図った.また,これらの活動のために5回の委員会を開催した.

II. 活動内容

1. 「親子保健活動における公衆衛生看護技術の体系化」の検討

本委員会では,2017年度から,公衆衛生看護学に関するテキストや親子保健活動に関連する文献から「親子保健活動に関する公衆衛生看護技術」の抽出を行ってきた.2017年度は母子保健活動として検討をしてきたが,妊娠期をスタートとする子どもを養育する父と母を中心とした家族への保健活動を「親子保健活動」ととらえ,「親子保健活動における公衆衛生看護技術」として整理を行った.また2017年度に抽出した技術は,小技術項目,中技術項目の2つのレベルであったが,中技術項目とそれを説明する小技術項目,さらに中技術項目を技術内容によりグループ化した大項目として整理を行った.

8月の夏季研修会ではこれらの検討経過を報告し,グループに分かれて意見交換を行った.また,現場の熟練保健師から技術項目と内容の妥当性について意見を聴取した.さらに12月には教育機関および現場の保健師の声を広く聞くために,会員校ならびに日本保健師連絡協議会の 5 団体の協力を得てパブリックコメントを実施した.夏季研修会での意見や熟練保健師の意見,パブリックコメントを受けて原案の修正を行い,技術項目を整理した.

さらに,委員会ではそれぞれの対象区分ごとに,それらの技術に関連する概念と理論の整理,基礎教育での教育方法の検討を行っている.

2. 夏季研修会でのプログラム担当

夏季研修会では,親子保健活動における公衆衛生看護技術項目のうちの個人・家族を対象とした中項目の技術項目全体を6つのグループにわけて,技術項目についての検討と各技術項目に対する教育方法についてのグループワークを行い,意見交換を行った.

III. おわりに

「親子保健活動における公衆衛生看護技術」の整理とその体系化の検討は,公衆衛生看護の実践者である保健師の専門性を技術面から明示化する試みである.そして専門技術の言語化は,格差社会においてだれ一人取り残すことなく,全ての人々の健康の保持増進を図るという公衆衛生看護の理念と保健師の役割を支える根拠となるものである.

しかし,これまでの公衆衛生看護学に関するテキストの記述を一次データとした検討では,生活基盤としての地区/小地域を対象とした公衆衛生看護技術の記述が十分ではないことが明らかになった.これらの技術には,実践知からの抽出も踏まえた検討の必要性が示された.

また,体系として示した親子保健活動における公衆衛生看護技術について,保健師基礎教育でどのような技術を,どのように教育するのかという点について,2017年度に全国保健師教育機関協議会で作成した「公衆衛生看護学教育モデル・コア・カリキュラム(2017)」を基に検討が必要である.

謝辞

パブリックコメントの実施に際しては,会員校の皆様ならびに日本保健師連絡協議会の5団体の皆様にご協力と貴重なご意見をお寄せいただいたことに感謝申し上げます.

Biographies

担当:大木幸子(杏林大学保健学部看護学科)

荒木田美香子(国際医療福祉大学小田原保健医療学部)

岩本里織(神戸市看護大学健康生活看護学領域)

桑原ゆみ(札幌医科大学保健医療学部看護学科)

佐伯和子(前北海道大学大学院保健科学研究院)

下山田鮎美(東北福祉大学健康科学部保健看護学科)

鈴木美和(淑徳大学看護栄養学部看護学科)

滝澤寛子(京都先端科学大学 健康医療学部看護学科)

平野美千代(北海道大学大学院保健科学研究院)

 
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