2019 年 3 巻 1 号 p. 54
全国保健師教育機関協議会は,2017年度に公衆衛生看護学教育モデル・コア・カリキュラム(2017)を作成した.その周知と活用を図ることを使命とし,2018年度特別プロジェクト委員会として「公衆衛生看護学教育モデル・コア・カリキュラム推進委員会」が設置された.2018年6月から2018年までに5回の委員会を開催し,夏と秋の教員研修会でプログラムの一部を担当した.
本モデル・コア・カリキュラム(2017)は,公衆衛生看護学の理念と目的を踏まえ,対象の捉え方,対象の健康課題に合わせた公衆衛生看護の技術と支援方法を具体化し,基礎教育の立場から内容と学修目標を示している.公衆衛生看護の技術・方法を確実に修得し,演習や実習を通して統合されるように構造化されていることを踏まえ,大項目・中項目は保健師教育課程の科目として設定することが可能であることを確認した.
2. 対象・健康課題・支援方法を加味した事例の作成公衆衛生看護の対象である個人/家族,地区/小地域,住民組織/地域組織,自治体等のすべての要素を含む事例を作成することとし,標準的な自治体として人口10万人のA市を設定し,地域アセスメントに必要な最低限の情報を構成した.事例は,学生が実習で出会う頻度の高い認知症,乳幼児虐待,生活習慣病とし,対象別の健康課題に対する支援方法を整理・提示した本モデル・コア・カリキュラム(2017)の理解を促進する教材とした.
3. カリキュラムマップおよび実習計画例の作成カリキュラム構築については,本モデル・コア・カリキュラム(2017)の構造を基盤としたカリキュラムマップ案を提示するとともに, 大項目【F】「臨地実習」を基盤とする実習計画案を提示し,教育への活用を図る一例を示した.
4. 夏季研修会および秋季研修会でのプログラム担当夏季研修会では,「保健師コアカリ2017の活用-公衆衛生看護の対象と支援方法を事例で学ぶ」と題し,作成した事例をもとに,公衆衛生看護の対象を考え,健康課題の抽出とその課題を解決する支援方法についてグループで議論した.
秋季研修会では,夏季研修会のグループワークの結果を踏まえ,委員会で検討・整理した事例別の健康課題と支援方法を説明し,公衆衛生看護学の教育実践に活用できる教材として提示した.併せて,本モデル・コア・カリキュラム(2017)の構造を基盤としたカリキュラムマップ案や実習プログラム案を提示し,教育への活用を図る具体的な提案を行った.
公衆衛生看護学教育モデル・コア・カリキュラム(2017)の具体的な活用としては,例えば,現任保健師や訪問看護師等の人材育成への参照,実習指導者研修における教育内容の披露なども考えられる.また,地域特性や健康課題の異なる事例の追加,事例を用いた演習の実施・改善・授業研究が今後の課題である.
本モデル・コア・カリキュラム(2017)は,全ての保健師教育機関で活用できることを目指したものである.社会の多様な健康課題に対応できる保健師の育成を目指し,全国で活用されることを期待する.
担当:野村美千江(愛媛県立医療技術大学)
澤井美奈子(湘南医療大学)
鈴木知代(聖隷クリストファ―大学)
和泉比佐子(神戸大学大学院)
古川照美(青森県立保健大学)
鳩野洋子(九州大学大学院)
宮﨑紀枝(長野県立大学)