現代社会学研究
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子育てサロンの利用状況にみる母親の子育て意識の相違
遠山 景広
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 33 巻 p. 23-42

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抄録

本研究では,子育てサロンの利用状況により,母親の子育て意識の連動に差異が生じるのかを検討した。子育てサロンは,都市化に伴う子育てのネットワークの減少など,子育て家庭の困難の緩和を意図して設置され,子育てサロンの利用による効果・地域や家庭から期待される役割,今後の課題が検討されてきた。一方で,調査対象は必然的に子育てサロンの利用者に限定されやすく,未利用者との比較については難しい状況にある。そこで本稿では,子育てサロンの利用者・未利用者の双方を調査対象とした札幌市での調査結果を元に,子育てサロンの利用状況と子育ての意識,特に孤独感など子育ての負担に関する意識に着目して,利用状況別に特徴的な意識構造が見られるかを確かめた。具体的には,①子育てサロンの利用者は未利用者と比べて負担感が小さいのかなど子育て意識の差を確認し,さらに②利用状況ごとに様々な子育てに関する意識同士の関係が変化するのか,分析・検討を行った。結果として,利用状況にかかわらず孤独感のある層が一定数いること, 連動する意識は利用状況によって大きく変わらないことが示唆された。ただし,孤独感がある場合にはその他の子育て負担感や3歳児神話の支持などのステレオタイプ型の子育て意識,さらに他者信用の弱さとの緩やかな親和性が認められた。このように,母親が子育ての責務を背負い込むことが孤独感につながっている可能性が指摘できる結果となった。

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© 2020 北海道社会学会
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