現代社会学研究
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北海道の家族
第2次世界大戦後の変化を中心に
布施 晶子
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2002 年 15 巻 p. 27-61

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抄録

小論では,第2次世界大戦後における北海道の家族の特徴を,地域社会の変容,とくに地域経済の変化にともなう道民の就業構造の変容と家族の態様に焦点をあてて分析した。北海道の家族の形態的特徴としては,つとに,核家族化の進行,三世代世帯の割合の減少,単独世帯の増加,家族規模の縮小等が指摘されてきた。小論においては,第一に「国勢調査」を中心とする分析を通して,形態的特徴のフォローを行い,ついで,これらの特徴のよって立つところを,北海道地域社会の展開に焦点をあてて探る作業を行った。その結果,北海道の家族が示す形態的特徴には,北海道の社会・経済的・人口学的背景が色濃く反映されているさまが浮かび上がった。
次いで,第2次世界大戦後,北海道をフィールドに展開されてきた家族研究のうち,北海道の家族の形態や機能さらには内部構造そして道民の生活構造の分析に関わる研究を取り上げ,これらの研究が提示する北海道の家族の特徴について考察した。それらの研究の多くは,開発資金の導入ひとつとってみても地域的な偏りが顕著で,経済的生活基盤にせよ社会関係レベルのネットワークにせよ基本的にはその脆弱性が明らかな北海道地域社会に生活する家族や世帯が,階層による格差を受け,時には世代の再生産さえも途切れさせられる状態におかれている現実を明らかにする一方,日々の生活防衛を通して紡ぎつつある,自立的な男女関係の模索を内包する新たな家族関係,血縁に特化しない新しい社会関係のネットワーク,公的な生活支援サポートシステム構築等の動向を示唆するものであった。

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