現代社会学研究
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ワーク・ファミリー・フィットの尺度構成
仕事と家庭の軋轢と相互促進
杉野 勇
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2006 年 19 巻 p. 1-20

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抄録

仕事領域と家庭領域の関係を定量的に分析する研究の一つに,「ワーク・ファミリー・コンフリクト」研究と呼ばれるものがある。これらの研究は共通して,家庭と仕事の間のコンフリクトについて明示的に言語化した質問項目から尺度を構成している。このタイプの調査研究が近年日本でも広がりを見せている一方で,アメリカでは更に別の家元の尺度を組合せる研究が現れている。
本稿の目的は,小田原市で実施したミドル期女性調査データを用いて,このタイプの尺度を構成することである。具体的には,仕事役割と家庭役割の葛藤・軋轢と相互促進の尺度を,それぞれ仕事から家庭,家庭から仕事の二方向において設定する。探索的因子分析と尺度相関の検討から,以下の点が明らかとなった。まず,仕事と家庭の軋轢は,仕事から家庭へと,家庭から仕事への二つの方向に区別される。次に,軋轢と相互促進は,一次元上の正負の極ではなく,それぞれ相対的に独立した要因である。最後に,相互促進を仕事から家庭へ,家庭から仕事への二つの方向に区別することには積極的な根拠が見当たらず,結論は留保された。
今後の課題としては,より広い年齢層と地域にわたった大規模調査データによってこれらの結果を検証すること,相互促進尺度が確かに二方向に区別されないのか否かについて詳細な検討を行うこと,そして何よりも,この尺度を用いて実質的な分析が蓄積されていくこと,などが挙げられる。

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