抄録
青かび病菌(Penicillium italicum)は,収穫後のカンキツ類果実の傷に付着し,青かび病を引き起こす主要なカンキツ貯蔵病害菌である.収穫後ウンシュウミカン果実において,紫外線(UV-B)照射が青かび病の発生,病斑拡大と果実品質に及ぼす影響ついて調査した.in vitro において,試験を行ったすべての UV-B 照射(15,30,60,120 kJ·m−2)が,青かび病菌に対して 99%以上の高い殺菌効果を示した.続いて,ウンシュウミカン‘青島温州’の早期収穫果(収穫日:10/30)と通常収穫果(収穫日:11/20)に対して,菌接種前または接種後に UV-B 照射を行い,腐敗果率と軟化部(水浸状の部分),菌糸部(軟化部より内部の菌糸を拡大させている部分)の直径について調査した.菌接種後 5 日目における軟化部の直径と発生率は,UV-B 照射の有無により違いがみられなかった.しかし,早期,通常収穫果とも,60 kJ·m−2 UV-B 照射により青かび病菌接種後 5 日目の菌糸部直径が小さくなった.早期収穫果においては,菌接種前,接種後の UV-B 照射にかかわらず 30 kJ·m−2 UV-B,60 kJ·m−2 UV-B 照射により,菌糸部発生率が減少した.また,UV-B 照射によって,果実の糖度,クエン酸含量,果実比重,果肉歩合,果皮色(L*,a*,b*)等に影響はみられなかった.このことから,収穫後ウンシュウミカンへの UV-B 照射は,病斑全体の抑制に対して明らかな効果はみられなかったが,UV-B 照射によって菌糸部が抑制されたことから,接種環境によっては貯蔵病害の抑制に有効な手段となる可能性が示された.