2016 年 85 巻 3 号 p. 209-216
‘八秋’は 2005 年にカキ(Diospyros kaki Thunb.)の主要品種である‘平核無’から国内で発見されたわい性の枝変わりである.‘平核無’は奇数倍数体の九倍体(2n = 135 = 9x)のため無核品種であるが,‘八秋’は数個の小さな完全種子を産した.そこで,本研究では‘平核無’と‘八秋’の栄養器官の形質,果実品質および倍数性を調査した.‘八秋’の休眠枝長,節間長および葉面積は‘平核無’より明らかに小さかった.満開期は‘平核無’と同じ 5 月下旬であったが,花の大きさも‘八秋’の方が‘平核無’より小さく,その果実肥大は生育期間中‘平核無’よりも低く推移した.‘八秋’の成熟期は‘平核無’と同じ 10 月下旬であった.‘八秋’の果実は小果(72 g)であったが,無核品種の‘平核無’と異なって数個の種子を産した.‘八秋’の甘渋性は‘平核無’と同様に不完全渋ガキであった.4 つの SSR の発現パターン解析では,ssrdk10 における 1 つの対立遺伝子の欠落以外は両品種間で差異は検出されなかった.フローサイトメトリーおよび染色体数の解析結果から,‘八秋’は八倍体(2n = 120 = 8x)であり,倍数性が減少したわい性の突然変異体であることが明らかになった.これらの結果から,‘八秋’が有核となった原因は,奇数倍数体から偶数倍数体に突然変異したことに起因すると考えられた.