2016 年 85 巻 3 号 p. 254-263
花持ちとエチレン感受性が異なるポットカーネーション品種を用いて定量 PCR による解析を行った.‘ポラリス’の花持ちは‘アリエル’(対照品種),‘オレンジデュオ’,‘レモンソフト’よりも有意に長かった.‘ポラリス’の花のエチレン生成量は低く,これはエチレン生合成関連遺伝子(DcACS1 と DcACO1)の発現抑制に起因していた.老化関連遺伝子(DcCP1,DcbGal,DcGST)は‘アリエル’,‘オレンジデュオ’,‘レモンソフト’では花弁老化時に発現上昇が見られたが‘ポラリス’では非常に低いままであった.これらの結果から,‘ポラリス’におけるエチレン生合成関連遺伝子の抑制によるエチレン低生成機構は花持ちに優れる切り花品種‘ミラクルルージュ’と‘ミラクルシンフォニー’と同一であることが示唆された.全ての品種でエチレン生合成関連遺伝子(DcACS1,DcACO1)と DcCP1,DcbGal,DcGST1,DcEIL3 は外生エチレン処理により発現誘導されたが,‘オレンジデュオ’と‘レモンソフト’は‘アリエル’と‘ポラリス’に比べ,外生エチレン処理後の花弁のインローリングが遅れて起こり,外生エチレンに対する感受性が低かった.これらの結果から,エチレン感受性が低い品種では,花弁のインローリングに関係する因子のみ変化していることが示唆された.