The Horticulture Journal
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原著論文
トレニア(Torenia fournieri Lind. ex Fourn.)の新規変異体「八重咲」はクラス C 花器官ホメオティック遺伝子への DNA 型トランスポゾン Ttf1 の挿入によって八重の花を着生する
西島 隆明仁木 智哉仁木 朋子
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2016 年 85 巻 3 号 p. 272-283

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抄録

八重の花を着生するトレニア(Torenia fournieri Lind. ex Fourn.)の新規変異体「八重咲」を,DNA 型トランスポゾン Ttf1 の転移が活性化している変異体「雀斑(そばかす)」の自殖後代から分離した.正常型の花は,それぞれ 5 枚の合着したがく片および花弁,4 本の雄蕊,2 枚の合着した心皮からなるが,「八重咲」では,雄蕊が花弁に変換する一方,がく,花弁,心皮は正常型と同じ形態を示した.八重咲形質は不安定で,花弁に変換した 4 本の雄蕊のうち,全部または一部が雄蕊に復帰変異した花が高頻度で生じ,さらに,復帰変異した花に由来する S1 世代では,大半の個体が正常型であった.「八重咲」における花弁に変換した雄蕊では,クラス C 花器官ホメオティック遺伝子の TfFARINELLITfFAR)の発現がほぼ完全に阻害されていた.この阻害は,TfFAR の第 2 イントロンへの Ttf1 の挿入によって起こっていた.一方,復帰変異は,Ttf1TfFAR から切り出されて発現が回復することにより起こっていた.TfFAR の遺伝子型と花の表現型の解析から,Ttf1 が挿入された TfFAR のアリルがホモ接合になることにより八重咲形質が発現することが明らかになった.一方,「八重咲」の雌蕊では,TfFAR の発現が完全には阻害されないため,心皮が花弁に転換しなかったと考えられた.さらに,「八重咲」と正常型を交雑し,未同定の Ttf1 の転移活性化因子と Ttf1 を遺伝的に分離することにより,八重咲変異の安定性を高めることができた.

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