The Horticulture Journal
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原著論文
リンゴの葯培養における植物体再生能力の品種間差
張 春芬佐藤 聡太津國 達朗佐藤 守岡田 初彦山本 俊哉和田 雅人松本 省吾吉川 信幸耳田 直純高岸 香里渡邉 学曹 秋芬小森 貞男
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2017 年 86 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

リンゴの葯培養において効率的に植物体を獲得することを目的として,28 品種(25 品種,3 台木品種)のカルス形成率,胚様体形成率,シュート形成率,増殖および馴化の難易度を調査した.カルス形成率は‘Red Astrachan(紅魁)’,‘金星’,‘つがる’,‘ゴールデン・デリシャス’,‘祝’,‘Gala’,‘Rome Beauty(芹川)’,‘紅玉’で高かったが,‘JM2’と‘King of Tompkins(緋の衣)’はカルスを形成しなかった.胚様体形成率に関しては‘祝’,‘芹川’,‘M.9’,‘スターキング・デリシャス’が高く,‘ゴールデン・デリシャス’,‘JM2’,‘緋の衣’,‘国光’,‘Smith’s Cider(柳玉)’は胚様体を形成しなかった.胚様体からのシュート形成に関して,‘千秋’,‘つがる’,‘さんさ’はシュートを形成したが,‘ふじ’,‘紅玉’,‘Wijcik’は全くシュートを形成しなかった.置床した葯当たりのシュート形成率は‘千秋’がもっとも高く,次いで‘スターキング・デリシャス’,‘祝’,‘つがる’の順であった.シュートの増殖と馴化は容易ではなく,多くの個体がこの過程で枯死した.結果的に馴化できた個体は‘千秋’と‘スターキング・デリシャス’に由来する個体のみであった.これらの結果から,倍加半数体を効率的に作出できる品種は‘千秋’と‘スターキング・デリシャス’であり,“胚様体形成”,“シュート形成”,“シュートの増殖と馴化”のすべての過程で優れる品種を選抜する必要があることが判明した.

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