2017 年 86 巻 1 号 p. 105-112
バラの香りの生理心理効果について報告されてきている.その多くはバラ精油についての評価であり,生花そのものがヒトに与える生理心理効果に関する報告は不十分である.また,精油抽出の際に副産物として得られるハイドロゾルもまたアロマセラピーに用いることができるのではないかと考えた.本研究では,モダンローズ品種‘ウィッシング’を実験に供試し,生花およびそれから得られるハイドロゾルがヒトに与える生理心理効果について検討した.心拍変動の解析により,生花の香りには鎮静効果があることが示されたが,ハイドロゾルにはそのような効果は見受けられなかった.GC および GC-MS の分析結果より,バラ生花の鎮静効果は β-caryophyllene, phenylethyl acetate および 3,5-dimethoxy toluene に由来する可能性が示唆された.本研究により,アロマセラピーにおいてバラの生花はバラ精油の代わりに使用できる可能性が示された.