抄録
高血圧,2型糖尿病,脂質異常症と身体活動水準および体力水準の関連性を調査した近年の運動疫学研究の成果を概観し,疾患一次予防に効果的な運動強度の推定を行うとともに,身体活動水準と体力水準の関連性についての考察を行った。 何れの疾患も全身持久性体力が高い者では,低い者に比べ,疾患発症リスクが低いことが報告されている。また,幾つかの先行研究では,高い日常身体活動量を維持するとともに,絶対的に中強度以上の身体活動を含むことが疾患予防に効果的であることが示されている。なお,疾患の発症予防に効果的な運動強度の閾値は,先行研究によりやや異なるが,中年男性においては6.0METS 付近であろうと推測される。生活習慣病の早期発症を予防するためには,少なくとも,高強度に分類される6.0METS の運動を乳酸性作業閾値以下で行える程度の全身持久性体力を有することが望ましいと思われる。