園芸学研究
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育種・遺伝資源
ニホンナシ系統TH3と少低温要求性タイワンナシ横山のF1における自発休眠特性
竹村 圭弘黒木 克翁松本 和浩森口 卓哉中田 昇田村 文男
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2012 年 11 巻 2 号 p. 181-187

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抄録
‘おさ二十世紀’の自殖後代でS4sm遺伝子をホモで持つニホンナシ系統TH3,台湾在来ナシ横山,およびそれらの交雑によって得られたF1系統群の萌芽率を3年間にわたり調査した.F1個体は,S遺伝子の判定とSSRマーカーによる親子鑑定の結果から,全個体がこの両親に由来する後代であると同定された.全調査日において横山の萌芽率は60%以上であり,11月下旬~1月上旬までの間に自発休眠に導入されなかった.一方,TH3の萌芽率は常に横山に比べて低く,その値は12月上旬~1月上旬にかけて徐々に上昇した.いずれの調査日ともに,F1個体が示す萌芽率は横山とTH3の萌芽率の間に広く分布した.全9回の調査日のうち8回の調査日において,F1個体の萌芽率の平均値は横山よりTH3の萌芽率に近い値を示した.そこで,TH3が自発休眠の深度に関する優性遺伝子をホモで持つと仮定してχ2検定を行ったが,この仮定は棄却された.これらの結果から,低温要求量を決める遺伝要因にはQTLが存在すると考えられた.多くのF1個体の落葉期は,TH3の落葉日に比べて横山の落葉日に近かった.一方,F1個体の展葉期は,横山とTH3の展葉日のほぼ中間にあたる4月9日に集中していた.
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© 2012 園芸学会
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