抄録
絶滅に瀕するサギソウ自生地を復活させるために,自生地からサギソウの実生育成に適する菌株の分離を試み,自生地における実生育成の可能性を検討した.まず,サギソウを無菌播種して得られた球根を自生地に早春に植え付け,発根した根に菌根菌が感染し始めた頃にその個体を回収し,根の細胞から菌株を分離した.次に,分離した菌株のうち,低温条件下でも菌糸が伸長し,サギソウプロトコーム生育促進効果の高い菌株を見出した.この菌株を当該自生地のサギソウプロトコームに接種し,ゲル状に被覆して自生地に設置する,菌根菌接種ゲル被覆サギソウプロトコーム設置法により自生地に設置したところ,サギソウプロトコームの生存率が格段に高まるとともに,生育状況も良好となった.この方法により,自生地を復活できる可能性が示唆された.