抄録
京都府特産野菜のひとつである舞鶴市在来の甘トウガラシ‘万願寺’では,栽培環境によって,時折,辛味果実が発生して問題になっている.これまでの遺伝解析研究において,生食用のピーマン品種では,単一の劣性遺伝子により辛味果実が全く発生しないことが明らかにされている.本研究では,新品種‘京都万願寺2号’の育成過程で得られた戻し交雑世代を用い,この遺伝子座に連鎖したDNAマーカー(SCY-800)の開発を行った.また,各戻し交雑世代を本DNAマーカーで選抜したところ,在来品種‘万願寺’の主要特性を残しながら,辛味果実が全く発生しない優良個体が得られて新品種の完成に繋がった.先行して育成された‘京都万願寺1号’と各形質を比較すると,新品種は低温期のアントシアニン着色果実の発生が少なく,辛味のない長果を産することが判明した.以上より,新品種はこれまでの品種にない優良形質を有しており,今後の生産現場への普及に期待がもたれる.