コマツナのハウス周年栽培において,窒素施肥量および可食部硝酸イオン濃度を低減することを目的として,施肥前土壌中の硝酸態窒素量を測定し,その窒素量を窒素施肥基準量からさし引いて施肥量を決める窒素診断施肥を行った.対照区の窒素施肥量はコマツナの窒素同化量を指標とし,対照区の窒素施肥量を基準量とする診断施肥I(診断I)区と対照区の窒素施肥量から季節ごとの栽培期間・地温を仮定し,推定した土壌からの無機化窒素量をさし引き,基準量とする診断施肥II(診断II)区を設けた.対照区の5作の積算窒素施肥量は20.0 g・m−2,診断IおよびII区では,それぞれ9.5および4.4 g・m−2であり,診断施肥を行うことで,窒素施肥量は著しく低減した.植物の伸長は気温が低いほど,植物への窒素供給量が少ないほど遅く,栽培期間が長くなった.診断施肥区では,対照区よりも収穫適期が遅れたが,対照区と同等の収量であった.また,春作および夏作では,診断施肥区の葉色が対照区よりも薄くなった.収穫適期における冬作および春作の可食部硝酸イオン濃度はすべての試験区で約1,000 mg・kg−1以下であったが,夏作および秋作の対照区では,2,500 mg・kg−1以上であった.夏作の診断IおよびII区は500 mg・kg−1以下となったが,秋作では,診断IおよびII区でそれぞれ約2,300および800 mg・kg−1であり,診断II区の方がより低くなった.以上のことから,コマツナのハウス周年栽培では,診断施肥を行うことで,窒素施肥量および可食部硝酸イオン濃度を低減できることが示された.