園芸学研究
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育種・遺伝資源
イオンビームの再照射によって秋輪ギク‘神馬’の複数形質を改良した新品種‘新神2’の育成
上野 敬一郎永吉 実孝今給黎 征郎郡山 啓作南 公宗田中 淳長谷 純宏松本 敏一
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2013 年 12 巻 3 号 p. 245-254

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抄録
白色の秋輪ギク‘神馬’は,我が国における主力品種であるが,側枝の発生が多く,低温遭遇により開花が遅れる欠点がある.‘神馬’を対象としたイオンビーム照射によって,無側枝性変異の選抜から側枝が少ない‘新神’および‘今神’を育成した.しかし,無側枝性と低温開花性の両特性を併せ持つ変異個体は得られなかった.そこで,イオンビーム照射により得られた変異体に再度変異誘発を行い,植物体の再生過程や変異体,照射材料および選抜手法を検討した.まず,ここで用いる変異誘発システムが,キメラ性の低い手法であることを確認し,イオンビーム照射当代からの変異個体選抜が可能であることを示した.また,イオンビーム照射により得られた変異体は,再照射による変異誘発および優良変異体の選抜が可能であることを実証した.さらに,‘新神’にイオンビームを照射し,低温開花性の選抜を行うことにより,無側枝性と低温開花性の特性を併せ持つ変異体が選抜でき,‘新神2’の育成に至った.この無側枝性と低温開花性の両特性の付与は,高品質切り花の省力・低コスト生産を実現するものである.このように,イオンビーム照射による変異誘発は,複数の特性を段階的に改良できることを示している.また,実用品種の育成を通して得られた知見は,輪ギクの特性改良に限らず,イオンビーム照射による変異誘発において,広く適用可能で有効な手法と考えられる.
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© 2013 園芸学会
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