2014 年 13 巻 1 号 p. 27-33
鹿児島県では,‘桜島大根’において均一性向上を育種目標としてF1 品種の育成を進めている.アブラナ科野菜のF1 育種においては,S遺伝子の多型に基づくF1 純度検定が提唱されているが,制限酵素処理を省くことで時間およびコストの大幅な削減が期待できる.そこで,簡便性や再現性に優れるマイクロサテライトマーカーについて,‘桜島大根’のF1 純度検定への利用を検討した.同じアブラナ科のBrassica rapa L. に由来するマイクロサテライトプライマー対300種類を供試し,‘桜島大根’の自然受粉品種から自殖により固定した両親系統とそのF1 組合せについて多型性を調査した.その結果,多型頻度が高い8種類のマーカーを見いだすことができた.そのうち,PCR産物のアガロースゲル電気泳動のみで判別が可能な2種類のマーカーを用い,生産力検定において有望であった3種類のF1 組合せおよびその両親系統の多型性を調査したところ,いずれの組合せにおいてもF1 純度の判別に利用することが可能であると考えられた.