抄録
カキの性表現様式は雌雄混株であり,多くの栽培品種は雄花非着生形質を示し交雑育種の制限要素となっている.これまでに,カキの雌雄性の遺伝的機構は解明されていないが,最近,カキの近縁二倍体野生種であるマメガキにおいて,雄性形質連鎖領域DlSx-AF4Sが同定された.そこで本研究では,多くのカキ品種を供試して,DlSx-AF4Sとカキの雄花着生特性との関連性を検証した.3品種を除くすべての雄花着生品種でDlSx-AF4Sが検出されたことから,マメガキとカキの性決定に関与する遺伝制御因子が共通であることが示唆された.一方,雄花非着生品種の17%でマーカーが検出された.カキの性表現はマメガキと比較して環境要因や栄養状態,樹齢の影響を受けやすいことから,カキでは雄性決定因子をもっていても雄性形質を発現できない可能性が考えられた.また,マメガキで示されたように,カキ属の性決定はXY型であることが予想されるが,高次倍数性のカキでは,MSY上の雄性決定遺伝子の遺伝子量に多様性が生じる可能性があり,そのことが複雑な性表現様式に影響している可能性もある.今後は,DlSx-AF4Sに連鎖する雄性決定因子をカキより同定し解析することで,カキの複雑な性表現様式が解明されることが期待される.