園芸学研究
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栽培管理・作型
収量構成要素の解析からみたトマト低段栽培における定植時の苗ステージと栽植密度
金子 壮東出 忠桐安場 健一郎大森 弘美中野 明正
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2015 年 14 巻 2 号 p. 163-170

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抄録

トマト低段栽培において,異なる栽植密度および定植時の苗ステージが収量に及ぼす影響を明らかにするため,定植後の生育および乾物生産について収量構成要素の解析を行った.定植時の苗の生育ステージの異なる4処理区:①二次育苗を行わず直接定植を行う直接定植区,②第1花房1番花のガク片が離れ始める開花直前に定植する開花直前区,③1番花のガク片が完全に開いてから定植する1番花開花区,④3番花のガク片が完全に開いてから定植する3番花開花区,および栽植密度の異なる2処理区:①2.6株・m−2(株間30 cm),②3.9株・m−2(株間20 cm),を組み合わせた8処理区を設けた.播種より110日間の試験の結果,処理区によって,葉面積指数(LAI)や茎長に有意な差があり,積算受光量にも違いがみられた.栽植密度が小さく,定植時の苗ステージが早いほど,単位面積当たりの果実新鮮重(FW)およびLAIが大きかった.しかし,受光量当たりの地上部総乾物生産量(TDM),すなわち,光利用効率(LUE)には処理区による有意な差はみられなかった.従って,栽植密度や定植時の苗ステージが異なっても,LUEには影響がないことが示唆された.収量構成要素間の相関関係をみると,果実FWの処理区間の差は果実乾物重(DW)の違いによるものであった.また,果実DWとTDMとの間,TDMと積算受光量との間,積算受光量とLAIとの間には,それぞれ有意な相関がみられたことから,処理による果実FWの差はLAIの差により生じたものと考えられた.以上の結果より,定植時の苗ステージや栽植密度を変えても,LUEには違いがみられないことが明らかになり,低段栽培において果実FWを増加させるためには,十分なLAIを確保し,群落受光量を増加させることが重要であると考えられた.

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