2015 年 14 巻 4 号 p. 341-348
トルコギキョウの自殖と他殖後代を調査し,一重咲き,二重咲きおよび八重咲きの花形に関する花冠形質の遺伝様式について検討した.八重咲きと一重咲きの交雑後代において明解な分離が認められ,二重咲きの花形は八重咲きと野生種由来または野生種の一重咲きとヘテロ遺伝子型を形成することによってのみ遺伝されることが明らかとなった.野生種を含む固定系統の交雑後代(F1)およびその自殖後代(F2)965個体のデータの調査から,この3種の花冠形質の遺伝は複対立する遺伝子座で制御されると推測された.3種の花形の分離パターンから,トルコギキョウの花における3つの対立遺伝子DD,DSおよびDWの存在を説明することが可能である.すなわち,花形の表現型は,DDDDのホモ型およびDDDSのヘテロ型が八重咲き,DDDWのヘテロ型が二重咲き,DSDSのホモ型,DWDWのホモ型およびDSDWのヘテロ型が一重咲きであり,二重咲きに関与する対立遺伝子DWは野生種トルコギキョウに起源すると推定した.