園芸学研究
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収穫後の貯蔵・流通
ナス果実の調理前後の物性の品種・系統間差
西本 登志前川 寛之米田 祥二矢奥 泰章黒住 徹吉田 裕一
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2016 年 15 巻 1 号 p. 81-86

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抄録

ナスの調理特性に関する品種・系統間差の有無を確認するため,‘賀茂ナス’の奈良県在来系統である‘矢田系’を含む5品種について調理前後の物性を比較するとともに,調理後の官能評価を実施した.調理は2 cm角に切断した果肉を蒸す方法と食用油で素揚げする方法により行い,自然冷却後の水分含有率と硬度を測定した.官能評価は揚げたナスの果肉について行い,美味しさならびに油っこさに対する食感を評価した.果肉の重量は,いずれの品種においても蒸すと増加し,揚げると減少した.加熱調理前の果肉の水分含有率は,‘みず茄’で最も大きく,‘くろわし’で最も小さかった.蒸した果肉の水分含有率は,いずれの品種においても加熱調理前と比較して微増したが,品種間で有意な差は認められなかった.揚げた果肉の水分含有率は,いずれの品種においても,加熱調理前と比較して著しく減少した.‘矢田系’と‘くろわし’は他の品種と比較して有意に水分含有率が大きく,油分含有量が小さく,果肉の水分含有率と油分含有量の間には有意な負の相関が認められた.加熱調理前の果肉硬度はいずれの品種間においても有意差が認められ,‘くろわし’で最も大きく,‘みず茄’で最も小さかった.蒸しと揚げのいずれの調理後も,果肉硬度は顕著に低下し,蒸した果肉の硬度は,‘矢田系’で他の品種と比較して有意に大きく,‘千両二号’で特に小さかった.また,揚げた果肉の硬度は,‘みず茄’で大きく,‘千両二号’と‘庄屋大長’で小さかった.官能評価では油っこさに対する食感について品種間で有意な差が認められ,‘庄屋大長’と‘みず茄’は‘矢田系’と比較して油っこいと評価された.揚げた果肉について,油っこさに対する食感と,水分含有率あるいは油分含有量の間で有意な相関が認められた.

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