園芸学研究
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栽培管理・作型
軟X線照射花粉の受粉がカキの種子形成,結実,および果実品質に及ぼす影響
尾形 凡生大森 健太郎加島 麻衣子草島 裕也濱田 和俊長谷川 耕二郎山根 信三廣瀬 拓也杉山 慶太
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2016 年 15 巻 3 号 p. 257-266

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抄録
軟X線照射花粉の受粉により,供試した‘富有’,‘松本早生富有’,‘伊豆’,‘太秋’,‘前川次郎’,‘西条’および‘禅寺丸’のカキ7品種すべてにおいて,収穫果実の完全種子がほぼ消失して空洞のしいな状種子となった.軟X線照射花粉を受粉したカキの受精胚珠は,受粉2週間後までは無照射花粉を受粉した胚珠と同様に発達したが,受粉4週間後に著しい胚乳組織の異常と胚の発達停滞が観察された.‘西条’,‘禅寺丸’,‘松本早生富有’では,軟X線照射花粉受粉果と無照射花粉受粉果との間に着果率の差はなかったが,‘太秋’は1000 Gy照射区で着果率が低下し,‘富有’,‘前川次郎’,‘伊豆’では500 Gy照射区,1000 Gy照射区とも無照射花粉受粉区に比べて着果率が低くなった.収穫果の品質では,‘西条’において軟X線照射花粉受粉果は無照射花粉受粉果に比べて果実重,果実径が小さくなり,‘富有’では果実縦径が低下したが,他の品種では果実の大きさに対する軟X線照射の影響は認められず,また,果実糖度,果肉硬度,果皮色に関しては,いずれの品種でも軟X線照射と無照射との間に有意な差はなかった.軟X線照射花粉を受粉した‘前川次郎’では,おそらくは完全種子消失の影響により,果頂裂果の発生が有意に抑制された.以上,本研究の結果より,軟X線照射花粉の人工受粉が,カキ無核・少核化技術として利用できる可能性が示された.
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© 2016 園芸学会
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