2016 年 15 巻 4 号 p. 425-431
アンスリウムの植物体はファイトマーの積み重ねによって構成されており,葉が展開するごとにその葉腋に花序が着生する.本研究ではアンスリウム ‘Tropical’ を供試し,葉の出る間隔(出葉間隔)および葉が出てからその葉腋に着生する花序の収穫段階までの発達に要する日数(花序発達日数)を約2年間調査した.調査より,出葉間隔および花序発達日数は周期的な変動を示すことが明らかになった.また,出葉間隔および花序発達日数は気温と強い負の相関関係を示すことが明らかになった.そこで,発育指数(DVI) と発育速度(DVR)を用いた手法により,気温から出葉間隔と花序発達日数を推定するモデルの構築を試みたところ,気温のみから高い精度で出葉間隔と花序発達日数を推定することが可能になった.また,両モデルにおけるDVRと気温との関係からアンスリウムの生育適温は25°C以上であることが示唆された.さらに,開発された2つのモデルを用いることで切り花の収穫本数を気温のみから高い精度で予測することが可能となったことから,本モデルは冬期のハウス加温温度を決める際の一つの手がかりになると考えられる.