園芸学研究
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土壌管理・施肥・灌水
手賀沼の富栄養化湖沼水に含まれる懸濁物質に由来する堆積物の特性と園芸培地としての利用
塚越 覚日下 ゆり魯 娜丸尾 達北条 雅章淨閑 正史篠原 温
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2017 年 16 巻 1 号 p. 19-25

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抄録

手賀沼の富栄養化水を利用したヨウサイの養液栽培で水路に沈殿するSSを造粒し,園芸培地として有効利用できるかを検討した.SS培地のNO3-N含有量は市販培地に比べて極めて少なかったが,交換性Mnは非常に高い値を示した.培地を好気発酵処理すると,SS培地のNO3-N含有量は発酵処理温度30°Cで処理前に比べて顕著に増加し,さらに処理中の培地の水分量が少ない程高い値を示した.交換性および水溶性Mn含有量は,SS培地の30°C処理では処理前よりも高くなった.一方,SS培地とバーク堆肥を混合することで交換性および水溶性Mn含有量が低下し,30°C処理でも処理後の水溶性Mn含有量の増加は認められなかった.45°C条件では培地の水分量にかかわらず,いずれの培地でもMn含有量が30 mg・kg–1以下となった.30°C処理のSS培地では,コマツナの初期生育が抑制されたが,それ以外の処理区では,コマツナの生育の差は比較的小さかった.以上,SS培地で栽培したコマツナの生育は市販の園芸培土での生育に及ばなかったが,SS培地とバーク堆肥の混合物を好気発酵処理することによって化学性が改善するため,園芸培土として利用できる可能性があり,未利用資源の活用や富栄養化湖沼水の浄化の一助となると考えられた.

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© 2017 園芸学会
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